令和2年度 東京都立中共同作成問題 適性検査Ⅱ分析
令和2年度 東京都立中共同作成問題 適性検査Ⅱ
2020年2月3日 実施
45分・大問3問(大問1は算数、大問2は社会、大問3は理科)
※すべて使用しているのは
立川国際、南多摩、両国高附属、白鷗高附属、富士高附属、大泉高附属。
桜修館、三鷹は大問1のみ独自問題差し替え、
小石川、武蔵高附属は大問2のみ独自問題差し替え。
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大問1
テーマは「交流会での展示とゲーム」。問題1と問題2は関連しているが、問題3は独立している。
問題1
問題文に与えられた〔約束〕通りに、パネルに縦向きの画用紙を6枚はるとき、問題文中にある図の「長さ①~④」をそれぞれ何cmにするか答える問題。
この年は1問目からがっつり読み込みをしなければならないが、逆に読み込みさえすればそれほど苦にならないか。
解答は1通りに決まらず、自分で決めた置き方によっても変わるが、ここは必ず正解したい問題。
問題2
問題文に与えられた〔約束〕通りに、パネルに59枚の画用紙をはるとき、パネルの台数が最も少なくなるときのパネルの台数を答える問題。
注意しなければならないのは、パネル1台につき、はる面は2つあること。
これに気づかないと「パネルが8台ある」という条件にしては台数が多くなり、迷宮入りする可能性あり。
例年よりも守るべき・見るべき条件や問題文が多く、慣れていないとここだけでかなりの時間を食ってしまう。
守るべき条件を「ヒント」として考えられるようにしたい。
ドツボにはまったときに問題3や他の大問に移れたかも大きなポイントになり、いろんな意味で差がついた一問だと言える。
問題3
〔ルール〕と会話から考えられる、会話文中にあてはまる数字を答える問題。
問題1・2とは完全に独立しており、〔ルール〕も新しくなっているので、問題1・問題2が出来なくても答えることはできる。
こういったものは問題文中に出てくる例を見ながら、規則やルールを理解するのが最も良く、実際にその通りに手を動かしていくのが最も早いと思われる。
先生(ア)の方は確実に正解したい。
花子さん(イ~オ)の方もそれほど面倒ではないので、特に大問1の配点が高い学校の受検生や、大問1で点数を稼ぐ受検生、大問2が差し替えになっている学校を受ける受検生はとりたいところ。
なお、演習時は時間との勝負になる可能性が高い。
この問題で出るようなレベルの計算(2桁÷1桁ぐらい)は、暗算でぱっと出来るようにしておきたい。
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大問2
テーマは「バス」。かつて九段中でも同様のテーマで出題実績あり。
社会がテーマではあるが、知識がほぼ全くといっていいほど要求されず、いわゆる「都立中の社会」。
今回は割合などの計算問題が1問も出題されなかった。
一方、「あなたの考えを書きなさい」という、ある程度答えに幅があり、具体性が求められる問題が出題されるようになっているのは、昨年から変更なし。
問題1
1990年度から2000年度までにかけて減少していた乗合バスの「合計台数(図1)」または「1年間に実際に走行したきょり(図2)」と比べて、2001年度から2015年度にかけてどのような移り変わりの様子が見られるかを、どちらかを選んで表1と関連づけて記述する問題。
「あなたの考えを書きなさい」とあるが、この問題は従来からある資料の読み取り問題であることに注意。
原因となる事象は表1から複数考えられるが、結論はグラフから読み取れるので、その部分は別解がないと言える。
複数の資料が与えられたときによくある「一方の資料が原因で、もう一方の資料が結果」の「因果関係」パターン。このパターンは過去にも、また他の公立中高一貫校でも出題されているので、慣れておきたい。
問題2
図3・表2に書かれているノンステップバスの標準的な設計の工夫から2つ選び、その2つの工夫に共通する役割として、どのようなことが期待されているか答える問題。
昨年度(H31年度)に出題された「あなたの考えを書きなさい」問題が今年も登場。
会話文中に「いろいろな人が利用しやすいように、設計が工夫されているようですね」とあるので、選んだ2つの工夫によって、具体的にどのような人がどのように利用しやすくなるか、を書く必要がある。
ここが「いろいろな人」という抽象的なくくりになってしまったり、「お年寄りや小さい子」などのように対象が複数になってしまったりすると、具体性に欠けてそれこそ「作問者に期待されている答え」が書けない。
単なる「ユニバーサルデザイン」という単語の勉強で終わってしまっている受検生は要注意。
ユニバーサルデザインとはどういうものなのか、具体例としてどんなものがあるのか、なぜそれが生まれたのかなど、そこまで深く学んでおきたい。
なお、「ユニバーサルデザイン」そのものは都立中でも過去に何回も出題されているテーマである。
問題3
「バス優先」の車線や「公共車両優先システム」のことを会話文や資料から読み取った上で、どのような課題があり、さらにその課題をどのように解決していけばよいかを書く問題。
問題2に引き続き「あなたの考えを書きなさい」問題。
「課題」そのものが考えられても「どのように課題を解決するか」がなかなか浮かばないのではなかろうか、と思う。
その意味では、「あなたの考えを書きなさい」問題の中でも一歩踏み込んだ問いになっている。
普段から課題を解決するためにどうしたらよいか、柔軟に考えることが大事である。
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大問3
テーマは「モーターや風で動く車」。知識があまり要求されず、「知識よりその場の結果が優先」といういわゆる「都立中の理科」。今年はその色合いが特に強く出ている。
問題1
表1の4つのプロペラから1つ選び、そのプロペラが止まっていたときに比べて、回っていたときの電子てんびんの示す値が何gちがうかを答える問題。
ここ最近見られる「実験結果と会話文を読み取って計算をする問題」が今年も出題された。
読み取りさえすれば非常に易しいので、この問題は必ず正解したい。
問題2
(1)は表5において、車の模型が最も速かったときのモーターとプロペラの組み合わせを書く問題。
時間が少ない=最も速いなので、これは即答。
(2)は表5から、太郎さんの予想(①の予想)か花子さんの予想(②の予想)が正しくなる場合があるかどうかを考える問題。
どちらかの予想を選んで、その予想が正しくなるかどうかを選び、そのように判断した理由を書くことになる。
都立中理科定番の「対照実験」の考え方を用いる問題。
①の予想を選んだ場合は、プロペラを固定した上で「モーターとかかった時間の関係」を比較、
②の予想を選んだ場合は、モーターを固定した上で「プロペラとかかった時間の関係」を比較する。
例えば、プロペラはEにしておいて、モーターだけA、B、C、Dと変えていくと、かかった時間はどうなるか、という比較の仕方をしていく。
①の場合は「ありません」、②の場合は「あります」が答えになる。
対照実験の考え方を用いる問題はほぼ毎年出題されているので、日頃から訓練しておくべし。
問題3
(1)表7の★にあてはまる記号を答える問題。これは確実に正解したい。
(2)実験3の結果から、風をななめ前から当てたときに車が前に動く条件を、表7を作成した上でそれをふまえて答える問題。
まずは表6をもとにして表7を作ると、その条件が見えてくると思われる。
ただし、「あといの和」だけでは条件として不十分なので注意。
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全体を通して
17ページにわたる、相変わらず長い問題文と時間との勝負になる適性検査Ⅱ。
90分なら全部解ける受検生は多いだろうが、それを45分でやるのがこの適性検査である。
「時間に追われてミスを多発する」という受検生は、まずそもそもそれが本当に時間のせいなのかを確認するべき。
もし解き直しや時間が長くなってもミスをしているのであれば、それは時間の問題ではない。
まずは時間制限なしできちんと丁寧にやることを考え、その上で少しずつ時間をかけないようにトレーニングしていくべし。
また、適性検査Ⅱは複数回解くのがよい。
このとき、「選んで答える問題」は毎回選ぶ物を変えるようにするとさらに効果が上がる。
また、大問1を三鷹や桜修館のものに差し替えたり、大問2を小石川や武蔵高附属のものに差し替えてもよい(この4校の志望者は、その逆をやるのがよい)。