平成31年度 東京都立中共同作成問題 適性検査Ⅱ分析
2019年2月3日 実施
45分・大問3問(大問1は算数、大問2は社会、大問3は理科)
※すべて使用しているのは
立川国際、南多摩、両国高附属、白鷗高附属、富士高附属、大泉高附属。
桜修館、三鷹は大問1のみ独自問題差し替え、
小石川、武蔵高附属は大問2のみ独自問題差し替え。
-
大問1
テーマは「学校生活最後のお楽しみ会」。ただし、問題1・問題2・問題3すべてが独立した問いになっている。
問題1
1枚の紙を折りたたみ、左とじのしおりを作るとき、しおりの表紙と5ページは、しおりにする前の状態ではどの位置にきて、さらに上下どちらの向きで文字を書けば良いかを答える問題。
図2の「しおりの作り方」をヒントに、構造を理解していくと、表紙の位置が限られていることが分かる。
解答は1通りに決まらず、表紙の場所によって5ページ目の場所が変わるが、ここは必ず正解したい問題。
問題2
ある模様を〔約束1〕に基づいて表現した図9を〔約束2〕で表現したとき、漢字と数字の合計の個数がいくつになるかを答える問題。また、それを踏まえて、〔約束1〕と〔約束2〕のどちらを使うと表現する漢字と数字の合計の個数が少なくなるのかを答え、さらにその理由を説明する問題。実質、答えることが3つある。
いわゆる「取扱説明書問題」が適性検査Ⅱに登場。図も多く登場し一見複雑なように見えるが、実はよく読むとそれほど複雑ではない。
ルールを読み込み、図10を利用して〔約束1〕で示された模様を描き、〔約束2〕で表すと、漢字と数字の合計は出せる。また、〔約束1〕の1の行や8の行が少ないことや、〔約束2〕のイの列やウの列が多いことから、答えを導き出す。
意外と差がついているように感じるが、この問題も正解をしておくと楽になる。
問題3
表1のカードをちょうど10枚使って、図16の「★」の位置から「え」の位置を必ず通るようにして、「お」の位置までおもちゃを動かすことにしたとき、使うカードの種類とその並べ方を答える問題。
問題2に引き続きこの問題も「取扱説明書問題」である。この問題でも図が多く登場し、複雑なように見せているが、よく読むとそれほど複雑ではない。ただし2問連続でこの形が出てくると、気になるのは時間配分である。
ポイントは「前進が2種類あること」「回転の仕方」「面を変えるときの進み方」。特に「前進が2種類ある」ことから、とりあえずいったん②を使わずに「★」→「え」→「お」に着くように手順を作っておき、後で10枚になるように微調整すればよい。
-
大問2
テーマは「外国人旅行者」。社会がテーマではあるが、知識がほぼ全くといっていいほど要求されず、いわゆる「都立中の社会」。
「あなたの考えを書きなさい」という、ある程度答えに幅があり、具体性が求められる問題が登場。
問題1
花子さんと太郎くんが会話文中で、図1をもとに日本人の出国者数と、日本への外国人の入国者数を比べて、それぞれの変化の様子について話し合っているので、それに合うように空欄(あ)~(え)を埋める問題。
都立中の問題に典型的な「グラフの読み取り」と「割合計算」の問題だが、割合計算が大幅に簡略化された。
問題文にも「変化のようす」と書かれているが、そもそも「折れ線グラフ」の時点で書くべき内容は「変化のしかた」、つまり「増減の度合い」または「変化が(あまり)ない」のほぼどちらかになるので、あとはグラフを読み取って答えればよい。
資料も1つしかないためそれほど難しくない。この問題のように、グラフの種類によってある程度書くべき方向性が決まるので、「グラフの特徴」をそれぞれつかみ、確実に正解できるようにしておきたい。
問題2
松本市、高山市、白浜町の3つの地域から1つを選び、その地域で外国人旅行者の延べ宿泊数がここ数年で大幅に増えているのは、観光資源があることの他にどのような理由が考えられるか、表2と表3を踏まえて答える問題。
「あなたの考えを書きなさい」という言い回しが使われた問題であるが、この問題は表2と表3を踏まえる必要があるため、解答の幅はそこまで広くないことに注意。
表2と表3を見比べると、どこの地域を選んでも「多言語対応」のことについて書かれていることが分かるので、それについて触れられていればOK。ただし、選んだ地域によって多少言い回しが異なる(表2に合わせる)ので、その点だけ注意。
問題3
案内図記号にはどのような役割があるか、あなたの考えを2つ説明する問題。
こちらがいわゆる「あなたの考えを書きなさい」問題。
会話文中には「さまざまな人に役立っているようだね。」とあるので、「どのような人にとって」「どのように役立っているか」を具体的に説明する必要がある。
この出題形式に慣れておらず、漠然と「さまざまな人にとって」という書き方をしてしまうとアウト。
平成30年度以前にはあまり見られなかった傾向の問題である。今後はこのような問題に答えられるようにも対応しておく必要がある。
-
大問3
テーマは「和紙」。知識があまり要求されず、「知識よりその場の結果が優先」といういわゆる「都立中の理科」。この傾向は適性検査Ⅱが共通化されて以降、ずっと変わっていない。
問題1
和紙の水の吸いやすさについて、選んだ紙と、選んだ基準をもとに、和紙は水を何倍吸うかを求める問題。割り切れない場合は小数第二位を四捨五入する指示がある。
「実験結果と会話文を読み取って計算をする問題」。全部で6通りの答えが考えられるが、正直どれを選んでもさほど変わらない(あえて言うならば、工作用紙の減った水の重さが整数なので比較的楽か?)。
選んだ基準の数字をそろえて比較し、計算していけばOK。必ず正解したい問題だが、基準として選ばなかった方の数字は使わないので惑わされないように注意。
問題2
プリント用の紙、新聞紙、工作用紙のうちから一つ選び、選んだ紙のせんいの向きが図3のA方向なのかB方向なのかを答え、その理由を実験2・実験3の結果にそれぞれ触れて説明する問題。
実験2と実験3どちらについても、先生が「結果とせんいの向きの関係」について話しているので、それを読み取った上で結果から答えを選べばよい。
新聞紙を選んだ場合は実験3の結果で、工作用紙を選んだ場合は実験2の結果で判断することになるが、問いには「実験2の結果と実験3の結果にそれぞれふれて」とあるので、変化が見られなかった(判断できなかった)もう片方の実験についても書く必要があることに注意。
この点はわずかな問題文の読み取りで差が出てしまうので、気をつけたい。
問題3
(1)5回目の実験4に使うのりを作るときに加える水の重さを考え、A~Dのうちから選ぶ問題。
(2)(1)で答えた組み合わせで実験を行うと、なぜなるべく紙がはがれにくくなるのりを作るために加える水の重さを調べることができるのかを、3回目の実験4の結果と関連づけて答える問題。
・3回目までの実験では、加える水の重さが多くなると、おもりの数が増えていること。
・会話文中では、4回目の水の重さは100gとなっていること。
の2点に注目すると、以下の2パターンに分けられる。
1.4回目のおもりの数が増えた場合
→5回目はさらに水の重さを重くして、おもりの数が増えるかどうかを選ぶべきなので、Dとなる。
(なお、会話文中に水は150g以下という指定があるので、こちらの場合も模範解答の通りある程度水の重さが予想できると考えられる)
2.4回目のおもりの数が減った場合
→70~100gの間に最もはがれにくいのりがあると推測できるので、その間の数値にすべき。したがってAとなる。
あまり見ないタイプの問題であったが、問題を読めばそれほど難しくない。時間配分に気をつけて答えを出したい。
-
全体を通して
18ページにわたる、相変わらず長い問題文と時間との勝負になる適性検査Ⅱ。
平成30年度よりやや難化した、というよりは、「取扱説明書問題」「あなたの考えを答える問題」「実験の設定を考える問題」など、平成30年度に比べて全体的に問題の方向性が変わったように見える。
しかし、基本的に要求されている力はほとんど変わっていない。
以前にも書いたが、「時間に追われてミスを多発する」という受検生は、まずそもそもそれが本当に時間のせいなのかを確認するべき。
もし解き直しや時間が長くなってもミスをしているのであれば、それは時間の問題ではない。
まずは時間制限なしできちんと丁寧にやることを考え、その上で少しずつ時間をかけないようにトレーニングしていくべし。